相談支援事業所さんちゃんの開設準備を進める中で、ある方からこんな言葉をいただきました。
「相談支援事業所を単独で運営していくのは厳しいですよ。」
この言葉は決して否定的な意味ではなく、障害福祉の現場を長年見てこられた方からの率直なご意見でしょう。
しかし、正直に言えば、その言葉は私たちの心に強い衝撃として残りました。
開設準備の中では、制度の理解、指定申請、事業計画、収支見込みなど、さまざまな課題に向き合ってきました。
それでも私たちは、
「公平・中立・公正な相談支援を実践したい」
という思いを大切にしてきました。
ところが、
「それだけで本当に運営できるのだろうか」
という現実的な問いを突き付けられたのです。
相談支援の原点とは何か
障害福祉サービスを利用するとき、本人や家族は多くの不安を抱えています。
どんなサービスがあるのか。
どこを利用したらよいのか。
本当に自分に合う場所なのか。
相談支援専門員は、その人の人生に寄り添いながら、一緒に考える存在です。
本来、相談支援とは、
サービス事業所の都合ではなく、
法人の利益でもなく、
利用者本人が望む心豊かな暮らしを実現するために存在しています。
だからこそ、相談支援専門員には高い専門性だけでなく、人としての誠実さと豊かな感性が求められるのだと思います。
会員から届いた一通のメッセージ
そんな中、NPO法人とらい・あんぐるの会員で、長年福祉現場で施設長、管理職も含めて障がい者現場の経験をされてこられた中尾浩康さん(threads一滴社として投稿中)から心温まるメッセージをいただきました。
「多くの法人の、社会福祉法人を含めて経営者は、ケアマネ、相談支援専門員に自前事業所への誘導を露骨に指示しています。しかし、利用者本位を貫き、利用者のニーズにしっかり応える相談支援事業所もまた口コミで強い支持を得ているところもあります。」
「相談援助ほど、専門員の人間性が問われる事業はありません。障害ある人たちへの理解、共感、協働を意識した活動は、必ず強い支持が得られます。」
「過剰な営業、宣伝がなくとも地域で利用者主体の支援を貫き確固とした評価を得てください。」
「個別性を重視したアセスメントを丁寧に行い、利用希望者や家族の言葉に最後まで耳を傾けてください。」
「じっくりと向き合う傾聴は利用希望者の姿勢を変えることも可能です。」
「囲い込みを嫌がる利用希望者も少なくないのも実態です。」
「単独での経営について外部の声を気にせず、さんちゃんとして専心くださいませ。」
この言葉をいただいたとき、私たちは相談支援の原点を改めて思い返しました。
囲い込みをしないという決意
相談支援事業所さんちゃんには、自法人の障害福祉サービス事業所がありません。
そのため、利用者を自前のサービスに誘導する必要はありません。
これは経営上の観点、自前誘導ありきという視点では不利ということになりましょう。
しかし見方を変えれば、
利用者個々の利益だけを基準に選択肢を提案できる
という大きな強みでもあります。
どの事業所が良いのか。
どのサービスが合っているのか。
地域資源をどう組み合わせるとその人らしい暮らしが実現するのか。
私たちは事業所のためではなく、利用者主体に考えることができます。
それは単独型だからこそ実現できる相談支援ではないでしょうか。
「ちゃんと見る」、「ちゃんと聴く」、「ちゃんと支える」…活動方針
さんちゃんという名前には、私たちが大切にしたい支援姿勢が込められています。
ちゃんと見る
制度や診断名だけを見るのではありません。
その人の生活歴や希望、不安、強みも見つめます。
ちゃんと聴く
答えを急ぎません。
家族の思いも含めて丁寧に聴き続けます。
ちゃんと支える
計画を作って終わりではありません。
地域の中で安心して暮らせるよう伴走します。
地域縁満という考え方…理念
私たちが大切にしている言葉があります。
それは
「地域縁満」
です。私か作った造語です。・・・「家族円満」から発想を得ました。・・・「地域はでっかい共同体ですから」
人は制度だけでは生きていけません。
福祉サービスだけでも生きていけません。
人と人とのつながりがあり、
安心して相談できる関係があり、
地域の中で役割や居場所を感じられることで、
初めてその人らしい暮らしが実現します。
相談支援とはサービス調整ではなく、
地域とのご縁を結び直していく営みでもあると私たちは考えています。
利用者本位を最後まで貫くために
単独事業所だからこそ経営的な苦労はあるかもしれません。
効率だけを考えれば遠回りに見えるかもしれません。
それでも私たちは、
利用者の声を聴き、
家族の思いを受け止め、
障害のある人と共に考え、
共に歩む相談支援を続けたいと思います。
それが簡単な道ではないことも分かっています。
地域福祉×エンタメ性の融合モデルを提案し、地域の皆さんと共にもっと自由に、もっとアクティブに、もっと楽しくを提唱する。つまり、地域福祉のロックンロールをめざすと、いい歳をして宣言してしまいました。ですから、あえて提案したいと思います。
利用者本位を貫く相談支援事業所が地域に一つあってもよいはずです。
私たちは、その存在を目指していきたいと思います。
おわりに
相談支援事業所さんちゃんは、まだ始まったばかりの小さな事業所です。
ですが、私たちは、
「囲い込みや誘導のための相談支援」ではなく、
「その人らしい、個々の望む暮らしを実現するための相談支援」
を追求していきます。
いつの日か、
「さんちゃんに相談してよかった」
そう言っていただけることが、私たちにとって何よりの評価です。
そしてその積み重ねこそが、利用者や家族、地域からの口コミとなり、信頼となり、支えとなっていくのだと信じています。
これからも、
ちゃんと見る。
ちゃんと聴く。
ちゃんと支える。
その原点を忘れず、歩み続けてまいりたいと思います。
「相談支援事業単独だから弱いのではなく、相談支援事業だけの単独だからこそ公平中立を守り、利用者の主体性の尊重を重視した支援に誠心向き合うことができる」という価値転換を中心テーマに据えてお伝えをさせていただきました。
相談支援事業を単独で運営することの厳しさは現実としてあります。多くの事業所が法人内サービスとの連携を強みに運営してもいましょう。しかし、その現実があるからこそ、「利用者のためだけに存在する相談支援事業所」の価値が失われてよい理由にはならないと思います。
むしろ、私たち、さんちゃんが目指すべき道は、経営の論理ではなく、相談支援の原点を守る道だと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。

